構造数理特別講義
I
————–
凸体の付値
田崎博之
2013
年度はしがき
i
はしがき
この講義ノートは新潟大学で行った集中講義の内容である。基本的には
2009
年 度と2011
年度に筑波大学で行った講義のノートに基づいているが、いくつかの部 分ではより詳しい説明に差し替えた。さらにこれらの講義ノートは以下の文献を 参考にした。• H. Groemer, On the extension of additive functionals on classes of convex sets, Pacific J. Math., 75 (1978), 397–410.
• D. Klain and G.-C. Rota, Introduction to geometric probability, Cambridge University Press, 1997.
• R. Schneider, Convex bodies: The Brunn-Minkowski theory, Cambridge Univ. Press, 1993
また講義中に印南信宏先生から指摘を受けた不十分な部分も修正した。これらの ご指摘と集中講義の機会をいただいたこと、および新潟滞在中にいろいろとお世 話になったことについて印南先生に感謝したい。
この講義では、平面や空間の線分、凸多角形、凸多面体の長さ、面積、体積など の幾何学的量に関する解説をした。より詳しく言うと、これらの図形の有限個の 合併について定まる付値と呼ばれる有限加法的な測度を扱った。単体複体の
Euler
数もその例の一つである。さらにこれらの図形の量が積分を通していろいろな関 係を持っていることも解説した。なお、講義では各種
Groemer
の定理の詳しい証明は与えなかったが、この講義 ノートには詳しい証明を掲載した。また、付値としてのEuler
数と単体複体のEuler
数の関係について講義では大まかな説明にとどめたが、この講義ノートには詳し い説明を掲載した。目 次
はしがき
. . . . i
第
1
章 付値と積分1 1.1
付値. . . . 1
1.2 Groemer
の積分定理. . . . 4
第
2
章 閉区間塊の内在的体積10 2.1
閉区間塊. . . . 10
2.2 Hausdorff
距離. . . . 14
2.3
閉区間塊の不変連続付値. . . . 16
第
3
章 多重凸体27 3.1
凸集合と凸結合. . . . 27
3.2
多重凸体. . . . 31
3.3 Euler
数. . . . 35
3.4
平面多重凸体の不変連続付値. . . . 40
3.5
平面多重凸体の交叉積分公式. . . . 44
1
第 1 章 付値と積分
1.1
付値定義
1.1.1
集合S
の部分集合全体をP (S)
で表す。L ⊂ P (S)
が空集合を含み有限 個の合併と共通部分に関して閉じているとき、Lを束と呼ぶ。束L
上定義された 実数値関数µ
が次の条件を満たすとき、L上の付値と呼ぶ。µ(A ∪ B) = µ(A) + µ(B) − µ(A ∩ B) (A, B ∈ L), (1.1.1)
µ( ∅ ) = 0.
(1.1.2)
例
1.1.2
集合S
の有限部分集合全体をP
0(S)
で表す。P
0(S) ⊂ P (S)
となり、P
0(S)
は束になることもわかる。さらに、A∈ P
0(S)
に対してA
の元の個数#A
を対応 させる関数はP
0(S)
上の付値になる。例
1.1.3 R
の有界閉区間の有限個の合併全体をI(1)
で表す。I(1)
の元A
は互いに 素な有界閉区間の合併で一意的に表される。これら有界閉区間の長さの和をµ
1(A)
で表すと、µ1はI(1)
上の付値になる。命題
1.1.4
束L
上の付値µ
は次の等式を満たす。(1.1.3) µ(A
1∪ · · · ∪ A
n) =
∑
n k=1( − 1)
k−1∑
i1<···<ik
µ(A
i1∩ · · · ∩ A
ik) (A
i∈ L).
この等式を包除原理または包除公式と呼ぶ。
上の命題はすべての自然数
n
とすべてのA
1, . . . , A
n∈ L
について上の等式が成 り立つことを主張している。さらに右辺はk = 1
からn
の各k
について{ 1, . . . , n }
からk
個とりだした元をi
1< · · · < i
kと並べてµ(A
i1∩ · · · ∩ A
ik)
をすべてのk
個 のとりだし方について和をとり、それをさらにすべてのk
について和をとってい る。各自然数n
についてこの等式を詳しくみてみよう。n= 1
のときは、任意のA
1∈ L
に対してµ(A
1) = µ(A
1)
であり、これは自明である。n
= 2
のときは、任意のA
1, A
2∈ L
に対してµ(A
1∪ A
2) = µ(A
1) + µ(A
2) − µ(A
1∩ A
2)
であり、これは
(1.1.1)
に一致する。n= 3
のときは、任意のA
1, A
2, A
3∈ L
に対 して右辺のk = 1
の和はµ(A
1) + µ(A
2) + µ(A
3).
k = 2
の和は− µ(A
1∩ A
2) − µ(A
1∩ A
3) − µ(A
2∩ A
3).
k = 3
の和はµ(A
1∩ A
2∩ A
3).
以上より、
µ(A
1∪ A
2∪ A
3)
=µ(A
1) + µ(A
2) + µ(A
3) − µ(A
1∩ A
2) − µ(A
1∩ A
3) − µ(A
2∩ A
3) + µ(A
1∩ A
2∩ A
3)
である。n
≥ 3
のときに等式を証明する必要がある。包除公式の左辺は集合の合併の付値の値であり、右辺は集合の共通部分の付値 の値だけの和と差になっていることに注意しておく。
証明
n = 3
のときは、最初にA
1∪ A
2∈ L
とA
3∈ L
に(1.1.1)
を適用する。µ(A
1∪ A
2∪ A
3) = µ(A
1∪ A
2) + µ(A
3) − µ((A
1∪ A
2) ∩ A
3)
=µ(A
1) + µ(A
2) − µ(A
1∩ A
2) + µ(A
3) − µ((A
1∩ A
3) ∪ (A
2∩ A
3))
=µ(A
1) + µ(A
2) − µ(A
1∩ A
2) + µ(A
3)
− { µ(A
1∩ A
3) + µ(A
2∩ A
3) − µ(A
1∩ A
2∩ A
3) }
=µ(A
1) + µ(A
2) + µ(A
3) − µ(A
1∩ A
2) − µ(A
1∩ A
3) − µ(A
2∩ A
3) + µ(A
1∩ A
2∩ A
3)
となり
(1.1.3)
は成り立つ。一般のn
のときは、nに関する帰納法で等式(1.1.3)
を 証明する。nのとき成り立つと仮定してn + 1
の場合も成り立つことを示そう。µ(A
1∪ · · · ∪ A
n+1)
=µ(A
1∪ · · · ∪ A
n) + µ(A
n+1) − µ((A
1∪ · · · ∪ A
n) ∩ A
n+1)
=
∑
n k=1( − 1)
k−1∑
i1<···<ik
µ(A
i1∩ · · · ∩ A
ik) + µ(A
n+1)
− µ((A
1∩ A
n+1) ∪ · · · ∪ (A
n∩ A
n+1))
=
∑
n k=1( − 1)
k−1∑
i1<···<ik
µ(A
i1∩ · · · ∩ A
ik) + µ(A
n+1)
−
∑
n l=1( − 1)
l−1∑
j1<···<jl
µ(A
j1∩ · · · ∩ A
jl∩ A
n+1)
1.1.
付値3
=
∑
n+1 k=1( − 1)
k−1∑
i1<···<ik
µ(A
i1∩ · · · ∩ A
ik).
定義
1.1.5
集合S
の部分集合族G ⊂ P (S)
が有限個の共通部分に関して閉じてい ると仮定する。ただし、共通部分が空集合でなければG
の元になるときに、Gは“有限個の共通部分に関して閉じている”
ということにする。G∪ {∅}
上の実数値関数
ν
が、A, B, A∪ B ∈ G
を満たすすべてのA, B
に対して(1.1.1)
と(1.1.2)
を満 たすとき、νをG
上の付値と呼ぶ。注意
1.1.6
付値の定義(定義 1.1.5)
においてG
は合併について閉じているわけで はないので、すべてのA, B ∈ G
について(1.1.1)
が意味を持つとは限らないこと に注意しておく。この講義の主な対象である
R
n内のコンパクト凸集合すなわち凸体の全体は有限 個の共通部分に関しては閉じているが、有限個の合併に関しては閉じていない。そ の凸体全体上で付値を考えるため、束ではない部分集合族上の付値を定義してい る。凸体の全体を距離空間として考えるときは空集合を含めないが、付値を考え るときには付値の定義域に空集合を含める必要があるので上のように付値を定義 した。補題
1.1.7
集合S
の部分集合族G
が有限個の共通部分に関して閉じていると仮定する。Gの元の有限個の合併全体
L
は束になる。証明
L
が有限個の合併に関して閉じていることは定め方からわかる。Lが有 限個の共通部分に関して閉じていることを示す。Lが二つの元の共通部分に関し て閉じていることを示せば十分である。Ai, B
j∈ G
に対して(
k∪
i=1
A
i)
∩ (
l∪
j=1
B
j)
= ∪
i,j
(A
i∩ B
j)
となり、各
A
i∩ B
jはG
に含まれるかまたは空集合になるため、上記共通部分はL
に含まれる。定義
1.1.8
補題1.1.7
におけるG
はL
を生成するといい、L= [G]
と表す。注意
1.1.9
有限個の共通部分に関して閉じているG
上の付値が、束[G]
上の付値に拡張できるかどうかが問題になる。そのための必要十分条件を与えるのが次の 節の主題である。次の例
1.1.10
は、有限個の共通部分に関して閉じているG
上の 付値が束[G]
上の付値に拡張できない例を与えている。例
1.1.10 S = { 1, 2, 3 } , G = {{ 1 } , { 2 } , { 3 } , { 1, 2, 3 }} ⊂ P (S)
として、λ(X) = {
0 (X = ∅ ), 1 (X 6 = ∅ )
によって
G ∪ {∅}
上の関数λ
を定める。このとき、以下が成り立つ。(1) G
は有限個の共通部分に関して閉じている。(2) λ
はG
上の付値になる。(3) [G] = P (S)
が成り立つ。(4) λ
を[G]
上の付値には拡張できない。問題
1.1.11 S
を一つの集合とし、L ⊂ P (S)
を束とする。L
上の付値の全体Val(L)
は自然な加法と実数倍に関して実ベクトル空間になることを示せ。問題
1.1.12 S
を一つの集合とする。このとき、以下を示せ。(1) P
0(S)
は束になる(例 1.1.2)。
(2) f
をS
上定義された実数値関数とする。λ
f(X) = ∑
x∈X
f (x) (X ∈ P
0(S))
によって
λ
f を定めると、λf はP
0(S)
上の付値になる。fが恒等的に1
の場合は、λf は例
1.1.2
で定めた元の個数#
に一致する。(3) S
上の実数値関数全体の成す実ベクトル空間をF (S)
で表す。このときΛ : F (S) → Val(P
0(S)) ; f 7→ λ
fは線形同型写像になる。
1.2 Groemer
の積分定理定義
1.2.1
集合S
の部分集合A
に対して、Aの特性関数I
AをI
A(s) =
{
1 (s ∈ A) 0 (s / ∈ A)
によって定める。Sの部分集合からなる束
L
の元の特性関数の線形結合(1.2.4) f =
∑
k i=1α
iI
Ai(α
i∈ R , A
i∈ L)
をL
単純関数、または単に単純関数と呼ぶ。1.2. Groemer
の積分定理5
命題
1.2.2
特性関数は次の性質を持つ。I
A∩B= I
AI
B, (1.2.5)
I
A∪B= I
A+ I
B− I
AI
B= 1 − (1 − I
A)(1 − I
B).
(1.2.6)
L
を束とすると、L単純関数の全体は代数の構造を持つ。証明
(1.2.5)
は特性関数の定め方よりわかる。I
A∪B= I
A+ I
B− I
A∩B= I
A+ I
B− I
AI
B となり、S− A ∪ B
の特性関数を考えると、1 − I
A∪B= (1 − I
A)(1 − I
B).
これらより、(1.2.6)もわかる。
(1.2.5)
と(1.2.6)
より、L単純関数の積と和はまたL
単純関数になる。さらに、定義より
L
単純関数の実数倍もL
単純関数になる。したがって、L単純関数の全 体は代数の構造を持つ。命題
1.2.3
特性関数は次の性質を持つ。I
A1∪···∪An=1 − (1 − I
A1)(1 − I
A2) · · · (1 − I
An) (1.2.7)
=
∑
n k=1( − 1)
k−1∑
i1<···<ik
I
Ai1∩···∩Aik
.
これも包除公式と呼ぶ。証明
(1.2.5)
と(1.2.6)
を繰り返し使うことにより(1.2.7)
を得る。(1.2.7)
はn = 1
のときは自明な等式になり、n= 2
のときは(1.2.6)
に一致する。一般のn
につい ては、S − A
1∪ · · · ∪ A
n= (S − A
1) ∩ · · · ∩ (S − A
n)
の特性関数を考えることによって、1 − I
A1∪···∪An= (1 − I
A1)(1 − I
A2) · · · (1 − I
An)
が成り立つことがわかる。これよりI
A1∪···∪An= 1 − (1 − I
A1) · · · (1 − I
An)(1 − I
An+1).
もう一つの等式は
1 − (1 − I
A1) · · · (1 − I
An)
=1 − {
1 −
∑
n k=1( − 1)
k−1∑
i1<···<ik
I
Ai1
· · · I
Aik}
=
∑
n k=1( − 1)
k−1∑
i1<···<ik
I
Ai1
· · · I
Aik=
∑
n k=1( − 1)
k−1∑
i1<···<ik
I
Ai1∩···∩Aik
よりわかる。
定理
1.2.4 (Groemer
の積分定理)
集合S
の部分集合族G
は有限個の共通部分に 関して閉じていて、µはG
上の付値であるとする。このとき、次の条件は同値に なる。(1) µ
は[G]
上の付値に一意的に拡張できる。(2) µ
は次の包除等式を満たす。すべてのn ≥ 2
とB
i, B
1∪ B
2∪ · · · ∪ B
n∈ G
を 満たすB
iに対して(1.2.8) µ(B
1∪ B
2∪ · · · ∪ B
n) =
∑
n k=1( − 1)
k−1∑
i1<···<ik
µ(B
i1∩ · · · ∩ B
ik).
(3) [G]
単純関数のµ
に関する積分を次のように定めることができる。[G]
単純関数
f = α
1I
A1+ · · · + α
kI
Ak(α
i∈ R , A
i∈ G)
に対して(1.2.9)
∫
f dµ =
∑
k i=1α
iµ(A
i)
によって積分を定める。
証明
(1) ⇒ (2) ⇒ (3) ⇒ (1)
の順序で証明する。(1) ⇒ (2) µ
は[G]
上の付値に拡張できるので、(1.1.1)より(1.1.3)
を得る。し たがって、(2)が成り立つ。(2) ⇒ (3) (1.2.9)
による積分の定め方が[G]
単純関数の表示に依存しないことを 証明する。空ではなく互いに異なるK
1, . . . , K
m∈ G
と0
ではない実数α
1, . . . , α
mが存在し、
∑
m i=1α
iI
Ki= 0, (1.2.10)
∑
m i=1α
iµ(K
i) 6 = 0 (1.2.11)
が成り立つと仮定する。
L
1= K
1, . . . , L
m= K
mとおき、L
m+1= K
1∩ K
2, L
m+2=
K
1∩ K
3, . . .
と二つの共通部分、三つの共通部分、...とK
iのすべての組合せの共1.2. Groemer
の積分定理7
通部分をL
iで表し、そのすべてをL
1, . . . , L
p(p = 2
m− 1)
とする。Gは有限個の 共通部分に関して閉じているという前提から、すべてのi
についてL
i∈ G
が成り 立つ。さらに{ L
1, . . . , L
p}
もi, j
についてmax { i, j } ≤ k
が存在してL
i∩ L
j= L
k が成り立ち、共通部分に関して閉じていることに注意しておく。C :=
{
(c
1, . . . , c
p)
∑
p i=1c
iI
Li= 0,
∑
p i=1c
iµ(L
i) 6 = 0 }
について考える。L1
= K
1, . . . , L
k= K
kだから(α
1, . . . , α
m, 0, . . . , 0)
はC
に含ま れ、Cは空ではない。q := max
(ci)∈C
min { i | c
i6 = 0 }
とおいて、qを与える(c
i) ∈ C
をとる。すると∑
p i=qc
iI
Li= 0, c
q6 = 0, (1.2.12)
∑
p i=qc
iµ(L
i) 6 = 0 (1.2.13)
が成り立つ。このとき、q
= p
とはならないことがわかる。なぜならば、qの定め 方よりc
1= · · · = c
q−1= 0
となるので、(1.2.12)はc
qI
Lq+ · · · + c
pI
Lp= 0
と書ける。もし
q = p
ならば、c
pI
Lp= 0
が成り立つ。さらに(1.2.13)
よりc
pµ(L
p) 6 = 0
となって矛盾する。よってq < p
となる。次にL
q⊂ L
q+1∪ · · · ∪ L
pとなることを示す。もしそうならないとすると、ある
x ∈ L
q− (L
q+1∪· · ·∪ L
p)
が存 在することになる。このとき、ILq(x) = 1, I
Li(x) = 0 (i > q)
が成り立ち、(1.2.12)
にx
を代入するとc
q= 0
となり矛盾。よって、Lq⊂ L
q+1∪ · · · ∪ L
pとなり、L
q= L
q∩ (L
q+1∪ · · · ∪ L
p)
= (L
q∩ L
q+1) ∪ · · · ∪ (L
q∩ L
p)
を得る。µと特性関数はともに包除等式を満たすので、上記等式より
µ(L
q) = ∑
q<i≤p
µ(L
q∩ L
i) − ∑
q<i<j≤p
µ(L
q∩ L
i∩ L
j) + − · · · , I
Lq= ∑
q<i≤p
I
Lq∩Li− ∑
q<i<j≤p
I
Lq∩Li∩Lj+ − · · ·
が成り立つ。右辺に現れる
L
q, L
q+1, . . . ,
の共通部分はいずれもあるs > q
によっ てL
sと表される。よってある係数d
sが存在してI
Lq= ∑
s>q
d
sI
Ls, (1.2.14)
µ(L
q) = ∑
s>q
d
sµ(L
s) (1.2.15)
が成り立つ。(1.2.14)と
(1.2.15)
を(1.2.12)
と(1.2.13)
に代入すると、c1= · · · = c
q−1= 0
であることから、(1.2.12)と(1.2.13)
と同じ形であって添字がq
より大き い式が得られる。これはq
の最大性に矛盾する。したがって、∑
m i=1α
iI
Ki= 0 ⇒
∑
m i=1α
iµ(K
i) = 0
が成り立つ。単純関数が
a
1I
X1+ a
2I
X2+ · · · + a
mI
Xm= b
1I
Y1+ b
2I
Y2+ · · · + b
nI
Yn と二通りに表現されるとすると、a
1I
X1+ a
2I
X2+ · · · + a
mI
Xm− b
1I
Y1− b
2I
Y2− · · · − b
nI
Yn= 0
となり、a
1µ(X
1) + a
2µ(X
2) + · · · + a
mµ(X
m) − b
1µ(Y
1) − b
2µ(Y
2) − · · · − b
nµ(Y
n) = 0
すなわち、a
1µ(X
1) + a
2µ(X
2) + · · · + a
mµ(X
m) = b
1µ(Y
1) + b
2µ(Y
2) + · · · + b
nµ(Y
n)
を得る。これよりµ
は[G]
上の積分を定め、(3)が成り立つ。(3) ⇒ (1) µ
は[G]
単純関数の空間上の積分を定めるので˜ µ(A) =
∫
I
Adµ (A ∈ L)
によって
µ ˜
の[G]
上の値を定めることができる。A∈ G
に対して˜ µ(A) =
∫
I
Adµ = µ(A)
となり、˜
µ
はµ
の[G]
への拡張になっている。(1.2.5)、(1.2.6)と積分の線形性よりA, B ∈ [G]
に対して˜
µ(A ∪ B) =
∫
I
A∪Bdµ =
∫
(I
A+ I
B− I
A∩B)dµ
=
∫
I
Adµ +
∫
I
Bdµ −
∫
I
A∩Bdµ
= ˜ µ(A) + ˜ µ(B) − µ(A ˜ ∩ B)
1.2. Groemer
の積分定理9
となってµ ˜
は[G]
上の付値になる。包除公式(1.1.3)
より拡張は一意的になり、(1) が成り立つ。第 2 章 閉区間塊の内在的体積
2.1
閉区間塊定義
2.1.1 R
nの部分集合[a
1, b
1] × · · · × [a
n, b
n] (a
i, b
i∈ R , a
i≤ b
i)
を
R
nの閉区間と呼ぶ。Rnの閉区間全体をI
0(n)
で表す。閉区間の次元をdim([a
1, b
1] × · · · × [a
n, b
n]) = # { i | a
i6 = b
i}
によって定める。
R
の閉区間I
i, J
iに対して(I
1× · · · × I
n) ∩ (J
1× · · · × J
n) = (I
1∩ J
1) × · · · × (I
n∩ J
n)
となるので、I0
(n)
は有限個の共通部分に関して閉じている。閉区間の有限個の合 併を閉区間塊と呼ぶ。R
nの閉区間塊全体をI(n)
で表すと、I(n)はI
0(n)
の生成す る束[I
0(n)]
になる。定理
2.1.2 (I(n)
に関するGroemer
の拡張定理)I
0(n)
上の付値はI(n)
上の付値 に一意的に拡張できる。証明
µ
をI
0(n)
上の付値とする。定理1.2.4
より、µに関する積分が存在する ことを示せばよい。これを次元n
に関する帰納法で証明する。n= 0
の場合は 明らかに定理は成り立つ。そこで、n≥ 1
としてn − 1
次元以下の場合に定理は 成り立つと仮定する。µに関する積分が存在しないと仮定して矛盾を導く。あるP
1, . . . , P
m∈ I
0(n)
とα
1, . . . , α
m∈ R
が存在して∑
m i=1α
iI
Pi= 0, (2.1.1)
∑
m i=1α
iµ(P
i) = C 6 = 0 (2.1.2)
を満たすとする。
k = # { i | dim P
i= n }
2.1.
閉区間塊11
とおく。(2.1.1)と(2.1.2)
を満たすP
1, . . . , P
m∈ I
0(n)
のうちで、kが最小になる ようにとっておく。k = 0
とする。これは(2.1.1)
と(2.1.2)
を満たすP
1, . . . , P
m∈ I
0(n)
をdim P
i≤ n − 1
となるようにとれることを意味する。そこでさらに、(2.1.1)と(2.1.2)
を満 たすP
1, . . . , P
mを含む超平面の個数が最小になるようにP
1, . . . , P
mを選び、これ らを含む超平面の個数をl
とする。定め方よりl ≥ 1
である。l = 1
とすると、n− 1
次元の帰納法の仮定に矛盾するので、l >1
となる。P
1, . . . , P
mを含む超平面をH
1, . . . , H
lとする。すなわちP
i⊂ H
1∪ · · · ∪ H
l(i = 1, . . . , m)
となっている。ここで、各
H
j は閉区間P
iを含むので、座標軸に垂直になるよう にとれることに注意しておく。IPi· I
H1= I
Pi∩H1 に注意して、(2.1.1)にI
H1 をかけ ると(2.1.3)
∑
m i=1α
iI
Pi∩H1= 0
を得る。Pi
∩ H
1はn − 1
以下の次元の閉区間になるので、n− 1
次元の帰納法の 仮定より(2.1.4)
∑
m i=1α
iµ(P
i∩ H
1) = 0
が成り立つ。(2.1.1)− (2.1.3)
は(2.1.5)
∑
m i=1α
iI
Pi−
∑
m i=1α
iI
Pi∩H1= 0.
(2.1.2) − (2.1.4)
は(2.1.6)
∑
m i=1α
iµ(P
i) −
∑
m i=1α
iµ(P
i∩ H
1) = C.
(2.1.5)
と(2.1.6)
においてP
i⊂ H
1となるi
が存在しなければ、P
i⊂ H
2∪ · · · ∪ H
l(i = 1, . . . , m)
となって
l
の最小性に反するので、Pi0⊂ H
1 となるi
0 が存在する。このとき、P
i0∩ H
1= P
i0 が成り立ち、(2.1.5)においてα
i0I
Pi0
− α
i0I
Pi0∩H1
= 0
が成り立ち、(2.1.6)
においてα
i0µ(P
i0) − α
i0µ(P
i0∩ H
1) = 0
が成り立つ。そこで、N
1= { 1, . . . , m } − { i | P
i⊂ H
1}
とおくと、
i ∈ N
1に対してP
iはH
2, . . . , H
lに含まれる。さらに(2.1.5)
と(2.1.6)
は∑
i∈N1
α
iI
Pi+ ∑
i∈N1
( − α
i)I
Pi∩H1= 0,
∑
i∈N1
α
iµ(P
i) + ∑
i∈N1
( − α
i)µ(P
i∩ H
1) = C 6 = 0.
と書くことができ、Pi
, P
i∩ H
1(i ∈ N
1)
はH
2, . . . , H
lに含まれるためl
の最小性 に反する。これはk = 0
という仮定から矛盾が起こったので、k≥ 1
が成り立つ。k ≥ 1
は、(2.1.1)と(2.1.2)
を満たすP
1, . . . , P
mにはn
次元のものが存在するこ とを意味する。必要なら順番を変えて、P1, . . . , P
kはn
次元で、Pk+1, . . . , P
mはn
より低い次元になるようにしておく。超平面H
をP
1∩ H
がP
1の面になり、Hが 定める閉半空間H
+, H
−のうちP
1⊂ H
+となるようにする。(2.1.1)にI
H をかけ ると次の等式を得る。∑
m i=1α
iI
Pi∩H= 0.
同様に
(2.1.1)
にI
H+とI
H−をかけると次の等式を得る。∑
m i=1α
iI
Pi∩H+= 0,
∑
m i=1α
iI
Pi∩H−= 0.
µ
が付値であることから∑
m i=1α
iµ(P
i) =
∑
m i=1α
iµ((P
i∩ H
+) ∪ (P
i∩ H
−))
=
∑
m i=1α
iµ(P
i∩ H
+) +
∑
m i=1α
iµ(P
i∩ H
−) −
∑
m i=1α
iµ(P
i∩ H).
n − 1
次元の帰納法の仮定と∑
m i=1α
iI
Pi∩H= 0
より
∑
mi=1
α
iµ(P
i∩ H) = 0
を得る。P
1∩ H
はP
1 の面になっていてP
1⊂ H
+だから、dimP
1= n
に注意すると、dim(P
1∩ H
−) = n − 1
となり、# { i | dim(P
i∩ H
−) = n } ≤ k − 1.
さらに
∑
mi=1
α
iI
Pi∩H−= 0
2.1.
閉区間塊13
が成り立っているので、kの最小性より∑
m i=1α
iµ(P
i∩ H
−) = 0
を得る。以上より∑
m i=1α
iµ(P
i∩ H
+) =
∑
m i=1α
iµ(P
i) = C.
改めて
2n
個の超平面H
1, . . . , H
2nをP
1=
∩
2n i=1H
i+を満たすようにとる。H1
, . . . , H
2nについて上記の超平面H
に関する議論を繰り返すと
∑
mi=1
α
iµ(P
i∩ H
1+∩ · · · ∩ H
2n+) = C
を得る。すなわち∑
m i=1α
iµ(P
i∩ P
1) = C
となる。(2.1.1)にI
P1 をかけると∑
m i=1α
iI
Pi∩P1= 0
を得る。n次元の閉区間
P
2, . . . , P
kについても同様の操作を繰り返すと∑
m i=1α
iI
Pi∩P1∩···∩Pk= 0,
∑
m i=1α
iµ(P
i∩ P
1∩ · · · ∩ P
k) = C.
D = P
1∩ · · · ∩ P
kとおくとD ∈ I
0(n)
となる。上の等式は∑
m i=1α
iI
Pi∩D= 0,
∑
m i=1α
iµ(P
i∩ D) = C
となる。1
≤ i ≤ k
のときP
i∩ D = D
となるので、k≥ 2
ならばk
の最小性に反 する。よってk = 1
となる。このとき、(2.1.1)はα
1I
P1+
∑
m i=2α
iI
Pi= 0
となる。左辺の第二項は
n − 1
次元以下の閉区間の単純関数になり、これが− α
1I
P1 と等しくなることはないので、矛盾が起こる。したがって、(2.1.1)と(2.1.2)
を同 時に満たす閉区間は存在しないことになり、µに関する積分が存在することがわ かる。2.2 Hausdorff
距離x, y ∈ R
nについてd(x, y) = | x − y |
によって
R
nに距離を定める。x∈ R
nと部分集合A ⊂ R
nに対してd(x, A) = inf
y∈A
d(x, y)
によってx
とA
の距離を定める。補題
2.2.1 x ∈ R
nとA ⊂ R
nに対して、d(x, A) = 0の必要十分条件はx ∈ A ¯
で ある。証明
x ∈ A ¯
であることと任意の> 0
に対してd(x, y) <
を満たすy ∈ A
が 存在することは同値になる。さらに、これはd(x, A) = inf
y∈A
d(x, y) = 0
と同値になる。定義
2.2.2
有界部分集合K, L ⊂ R
nに対してHausdorff
距離δ(K, L)
を(2.2.7) δ(K, L) = max
( sup
a∈K
d(a, L), sup
b∈L
d(b, K) )
によって定める。
補題
2.2.3 K, L ⊂ R
nがコンパクトのとき、δ(K, L) = 0
の必要十分条件はK = L
である。証明
δ(K, L)
の定め方よりδ(K, L) = 0
の必要十分条件はsup
a∈K
d(a, L) = sup
b∈L
d(b, K ) = 0
である。さらにこれは任意の
a ∈ K
についてd(a, L) = 0、すなわち a ∈ L ¯ = L、
かつ、任意の
b ∈ L
についてd(b, K) = 0、すなわち b ∈ K ¯ = K
と同値になる。よってこれは
K = L
を意味しているので、補題の結論が得られる。2.2. Hausdorff
距離15 R
nの単位球体をB
nで表す。コンパクト集合K ⊂ R
nと≥ 0
に対してK + B
n= { x + u | x ∈ K, u ∈ B
n}
によってK + B
nを定める。補題
2.2.4 K, L ⊂ R
nをコンパクト部分集合とする。このとき、K + B
n= { x ∈ R
n| d(x, K ) ≤ }
が成り立つ。さらに、δ(K, L)
≤
の必要十分条件は、K⊂ L + B
n, L ⊂ K + B
n が成り立つことである。証明 まず最初の等式を証明する。任意の
x ∈ K + B
nはy ∈ K
とu ∈ B
nに よってx = y + u
と表せる。これより| x − y | ≤
となりd(x, K) ≤
を得る。よっ て、x∈ { z ∈ R
n| d(z, K) ≤ }
が成り立つ。逆にx ∈ R
nがd(x, K) ≤
を満た すと仮定する。任意の自然数m
について| x − y
m| ≤ + 1/m
を満たすy
m∈ K
が 存在する。Kはコンパクトだらか収束部分列y
m0 をとることができ、その極限y
はK
に含まれる。このとき、|x − y | ≤
が成り立ち、x− y = u
によってu ∈ B
nを 定めると、x∈ K + B
nが成り立つ。以上でK + B
n= { x ∈ R
n| d(x, K ) ≤ }
が成り立つことがわかった。後半の主張は次のようにわかる。
δ(K, L) ≤
⇔ sup
a∈K
d(a, L) ≤ , sup
b∈L
d(b, K ) ≤
⇔∀ a ∈ K d(a, L) ≤ , ∀ b ∈ L d(b, K ) ≤
⇔ K ⊂ L + B
n, L ⊂ K + B
n.
R
nのコンパクト部分集合全体をC
nで表す。定理
2.2.5 δ
はC
n上の距離になる。証明 任意の
K, L ∈ C
nに対してδ(K, L) = δ(L, K) ≥ 0
が成り立つことは定義より直接わかる。補題